空き家とは?法律と統計で違う定義と、相続後にやることの全体像

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空き家とは、人が住んでいない住宅のことですが、定義は「統計」「法律」「税金」の3つがあり、それぞれ指している範囲が違います。ニュースで見る「空き家900万戸」は統計の数字で、別荘やアパートの空室も含みます。固定資産税が上がるのは、そのうち市町村長から勧告を受けたものだけです。まず自分の家がどの定義に当てはまるかを確かめてから、次の手を決めてください。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%でどちらも過去最多・過去最高でした(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」令和6年9月25日公表/参照日:2026年9月23日)。ただしこの900万戸を、そのまま「放置された実家」の数として読むと実態を見誤ります。理由は後述します。
空き家とは?定義は「統計」「法律」「税金」で3つある
空き家という言葉は、使う場面によって指す範囲が変わります。同じ建物が、統計では空き家に数えられ、法律では空家等に当たらず、税金の扱いは今までどおり、ということが普通に起こります。まず全体像を押さえてください。
| どの定義か | 呼び方 | 何のために使われるか | 範囲 |
|---|---|---|---|
| 統計 | 空き家 | 国の調査で戸数を数える | いちばん広い。別荘や賃貸の空室も入る |
| 法律 | 空家等 | 市町村が指導・勧告・命令を出す対象を決める | 「使われていないことが常態」のものに絞られる |
| 税金 | 勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等 | 固定資産税の住宅用地特例から外す | いちばん狭い。勧告が出て初めて該当する |
統計上の空き家(住宅・土地統計調査)
5年ごとの住宅・土地統計調査では、調査時点で居住世帯のない住宅を空き家として数えます。売りに出している家も、借り手を募集中のアパートの一室も、年に数回しか行かない別荘も、すべて空き家です。
一方で、いわゆる「廃屋」はこの調査では住宅として数えていません。つまり統計の空き家は「まだ住宅として通用するが、いま人が住んでいないもの」という意味合いになります。
法律上の空き家=「空家等」(空家法第2条第1項)
市町村が実際に手を出せるかどうかは、法律の定義で決まります。空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は、空家等を次のように定めています。
この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
読むときに効いてくるのは「常態」という言葉です。たまたま今日空いている、というだけでは足りず、使われていない状態が続いていることが前提になります。統計が「調査時点で人がいない」で数えるのに対し、法律は状態の継続を見ます。そのぶん法律上の空家等は統計より狭くなります。
もう2つ、条文から読み取れることがあります。建物だけでなく敷地も空家等に含まれること、そして国や地方公共団体が持っているものは除かれることです。庭木が伸びて隣家に越境しているようなケースが空き家の問題として扱われるのは、敷地が定義に入っているからです。
なお、具体の建物が空家等に当たるかどうかを判断するのは物件がある市区町村です。迷う場合は所在地の自治体の空き家担当窓口に確認してください。
税金が変わる空き家(勧告を受けたもの)
3つ目がいちばん狭く、そして家計に直接響きます。地方税法は住宅の敷地の固定資産税を軽くする特例を定めていますが、その対象から市町村長の勧告を受けた管理不全空家等と特定空家等の敷地を除いています(地方税法第349条の3の2第1項)。
言いかえると、空き家になっただけでは税金は変わりません。変わるのは勧告という行政の手続きを踏んだあとです。この順序は後の章で詳しく見ます。
空き家900万戸のうち、「実家が空き家になった」は285万戸
ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。900万2千戸のうち、多くの人が思い浮かべる「誰も住まなくなった一戸建て」は285万1千戸で、全体の31.7%にとどまります。残りのおよそ7割は、借り手を探している賃貸の空室や、売りに出している家、別荘です。
| 空き家の種類 | 戸数 | 割合 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 賃貸用の空き家 | 443万6千戸 | 49.3% | 借り手を募集中の住宅。大半がアパート・マンションの空室 |
| 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 | 385万6千戸 | 42.8% | 転勤・入院などで長期不在の住宅、取り壊し予定の住宅など |
| 二次的住宅(別荘など) | 38万4千戸 | 4.3% | 別荘や、たまに寝泊まりする住宅 |
| 売却用の空き家 | 32万6千戸 | 3.6% | 売りに出している住宅 |
| 合計 | 900万2千戸 | 100% | 空き家率 13.8% |
相続や転居で残った実家が当てはまるのは、上の表の2行目「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」385万6千戸です。さらにこれを建て方で絞ると、一戸建てが285万1千戸。一戸建ての空き家の80.9%がこの区分に入ります。逆に共同住宅の空き家は78.5%が賃貸用、つまり不動産会社が募集中の部屋です。
この区別が要るのは、対策の話がすべて後者に向けられているからです。募集中のアパートの空室は所有者が管理していて、放置もされていなければ勧告も来ません。行政が問題にしているのも、法律が対象にしているのも、管理する人がいなくなった一戸建てのほうです。「空き家が900万戸もある」という数字に自分の実家を重ねて焦る必要はありませんが、285万戸のほうに入っているなら、それは対策の対象です。
この区分の空き家は、平成15年の212万戸から令和5年の386万戸へ、20年でおよそ2倍に増えました。発生原因の半分以上は相続です(出典:国土交通省「空き家対策 特設サイト」/参照日:2026年9月23日)。
放置するとどうなるか|指導→勧告→命令→代執行
空き家を放置したときに起きることは、2段階×4手順で決まっています。いきなり取り壊されたり課税が跳ね上がったりするわけではなく、順番に進みます。逆に言えば、どの段階で止めるかは所有者が選べます。
第1段階:管理不全空家等(空家法第13条)
市町村長は、適切な管理が行われていないためにそのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある空家等を「管理不全空家等」として、必要な措置をとるよう指導できます(第13条第1項)。指導しても改善されず、特定空家等になるおそれが大きいと認めるときは勧告に進みます(同条第2項)。
ここが2023年の法改正で追加された段階です。「特定空家に指定されると固定資産税が上がる」と説明されることが多いのですが、条文はその一歩手前の管理不全空家等でも、勧告を受けた時点で住宅用地特例から外れると定めています。特定空家等になるまで猶予がある、という理解は現行法では正しくありません。
第2段階:特定空家等(空家法第22条)
特定空家等は、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいいます(第2条第2項)。
この段階に入ると、助言・指導、勧告、命令、行政代執行という順で手続きが進みます。
- 助言又は指導(第22条第1項)…除却・修繕・立木竹の伐採などを求められる
- 勧告(第22条第2項)…改善されないとき、猶予期限を付けて勧告。ここで住宅用地特例が外れる
- 命令(第22条第3項)…正当な理由なく勧告に従わないとき。事前に意見書提出や公開の意見聴取の機会がある
- 行政代執行(第22条第9項)…命令に従わないとき、市町村が自ら、または第三者に措置を行わせる。費用は所有者の負担
なお、災害など緊急の場合には、命令を出す時間がないときに市町村が先に措置を行える規定もあります(第22条第11項)。いずれの場合も、かかった費用は所有者から徴収されます。解体を自分で手配するより安く済む仕組みではありません。
どの状態が該当するかの具体的な目安は、国土交通省の「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」に示されています。最終的な判断は市町村が総合的に行います。
固定資産税は「6倍になる」のか
空き家の記事でいちばんよく見る「固定資産税が6倍」という表現は、正確ではありません。外れるのは税額そのものではなく課税標準の特例で、しかも別に負担調整の仕組みがあるためです。仕組みを分けて見てください。
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分)…課税標準を価格の6分の1に
- 一般住宅用地(200㎡を超える部分)…課税標準を価格の3分の1に
- 勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地は、この住宅用地から除かれる
つまり勧告を受けると、課税標準が6分の1や3分の1に圧縮されていた状態が解け、本来の評価額をもとに計算されることになります。負担が大きく増えるのは確かです。ただし固定資産税には負担調整措置があり、税額がそのまま6倍になるとは限りません。実際にいくらになるかは評価額・面積・その年の負担水準で変わるので、物件の所在地の市区町村に確認してください。
同じ理由で、建物を解体して更地にした場合も住宅用地特例は外れます。建物が無くなれば「住宅の敷地」ではなくなるためです。解体すべきかどうかを税金だけで決められないのは、この2つが表裏になっているからです。
相続した空き家で、まず済ませること
売る・貸す・壊すのどれを選ぶにしても、先に済ませないと動けないことが2つあります。
相続登記(2024年4月1日から義務)
不動産登記法は、相続で所有権を取得した人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権移転登記を申請する義務を課しています(第76条の2第1項)。正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象です(第164条第1項)。この義務化は2024年4月1日に施行されました(出典:法務省/参照日:2026年9月23日)。
登記が被相続人の名義のままでは、売ることも、担保に入れることもできません。名義が誰にあるのかが分からないまま話を進めると、買主が見つかってから手続きで止まります。期限の面でも実務の面でも、最初に片づけるべき項目です。
家財の整理
売却でも解体でも賃貸でも、家財が残ったままでは先に進みません。買取業者に売る場合は家財ごと引き取ってもらえることもありますが、仲介で売るなら原則として空にしてから引き渡します。遠方に住んでいて自分で運び出せない場合ほど、ここが工程の中でいちばん時間を食います。
家財の片付けを頼む業者の選び方は、遺品整理士とは何かと不用品回収業者の比較にまとめてあります。
空き家の出口は「貸す・売る・壊す・持ち続ける」の4方向
登記と家財が片づいたら、方向を決めます。選択肢は細かく分かれますが、大きくは4方向です。
| 方向 | 向いているケース | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 貸す | 建物が住める状態で、立地に賃貸需要がある | 一度貸すと、相続空き家の3,000万円特別控除は使えなくなる |
| 売る | 維持する予定がなく、早く手放したい | 特別控除には期限と要件がある。仲介と買取で価格と期間が変わる |
| 壊す | 建物が古く、そのままでは買い手がつかない | 解体費が先に出ていく。更地にすると住宅用地特例が外れる |
| 持ち続ける | 相続人の間で方針が決まっていない | 管理を怠ると指導・勧告の対象になり、特例が外れる |
相続した空き家を売るときには、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)。ただし昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続の開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいなかったこと、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることなど要件が細かく、令和9年12月31日までの譲渡が対象です。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合、控除額は2,000万円に制限されます(出典:国税庁 タックスアンサー No.3306/令和8年4月1日現在法令等/参照日:2026年9月23日)。
8つの選択肢と、税金から逆算した判断の順番は空き家の活用方法8選で詳しく整理しています。方向を決める前に、まずこちらを読んでください。選ぶ順番によって手元に残る金額が変わるためです。
よくある質問
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何か月空けたら空き家になりますか?
統計上は、調査の時点で居住世帯がいなければ空き家として数えられます。一方、空家法上の「空家等」は、居住その他の使用がなされていないことが「常態」であることが条件で、何か月という日数が条文に定められているわけではありません。実際に空家等に当たるかどうかは、物件のある市区町村が状況をみて判断します。
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空き家になったら固定資産税はすぐ上がりますか?
上がりません。住宅用地特例から外れるのは、市町村長から勧告を受けた管理不全空家等と特定空家等の敷地です。空き家になっただけでは対象になりません。ただし管理を怠れば指導から勧告へ進むため、放置していれば対象になり得ます。
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特定空家に指定されないかぎり税金は変わらないのですか?
いいえ。特定空家等の一歩手前である管理不全空家等でも、勧告を受ければ住宅用地特例から外れます。2023年の法改正で加わった段階なので、「特定空家になるまでは大丈夫」という古い説明には注意してください。
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空き家は900万戸もあるそうですが、自分の実家もその1つですか?
統計上は該当します。ただし900万2千戸の約半分は借り手を募集中の賃貸住宅の空室で、別荘なども含まれます。相続や転居で誰も住まなくなった一戸建ては285万1千戸、全体の31.7%です。行政の対策や法律の規定は主にこちらに向けられています。
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相続登記をしないまま空き家を放置するとどうなりますか?
2024年4月1日から相続登記の申請は義務です。取得を知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。加えて、登記が故人の名義のままでは売ることも担保に入れることもできないため、手放したくなった時点で手続きが止まります。
この記事が参照した一次情報
法令と税制は変わります。本文の内容は次の資料を参照日時点で確認したものです。
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第2条・第13条・第22条(e-Gov 法令検索)
- 地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2・第164条
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」(令和6年9月25日公表)
- 国土交通省「空き家対策 特設サイト」
- 国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」
- 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等)
- 法務省「相続登記の申請義務化」
参照日:2026年9月23日。税額や適用の可否、空家等に当たるかどうかの判断は個別の事情で変わります。実際の判断は、物件の所在地の市区町村、税務署または専門家に確認してください。
