借地権の売却方法|地主の承諾・承諾料・買取業者の使い分け

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借地権は売れます。ただし、借地権が土地の賃借権なら、売るには地主の承諾が要ります(民法第612条)。地主が承諾しないときは、売る前に裁判所へ「承諾に代わる許可」を申し立てる道があります(借地借家法第19条)。売り方は、①地主に買い取ってもらう、②承諾を得て第三者に売る、③地主と一緒に土地ごと売る、④借地権を扱う買取業者に売るの4つです。値段も承諾料も法律では決まっておらず、話し合いで決まります。まず契約書と登記で自分の借地権を確かめ、地主の意向を聞くところから始めます。
・借地権を売る前に確かめる3つのこと(地上権か賃借権か、建物の登記、契約の中身)
・4つの売り方の違いと、地主の承諾・承諾料のルール
・地主が承諾しないときの裁判所の手続き(借地非訟)
・売ったときの費用と税金。承諾料を差し引いた手取りの計算例
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借地権を売る前に確かめる3つのこと
最初に確かめるのは、借地権が地上権か土地の賃借権か、建物の登記がだれの名義か、借地契約に何が書いてあるかの3つです。どれも売り方と、地主との話し方を左右します。
| 確かめること | 見るもの | 売るときに効くこと |
|---|---|---|
| 地上権か、土地の賃借権か | 借地契約書(「地上権設定」か「土地賃貸借」か)、土地の登記事項証明書 | 賃借権なら、譲り渡すのに地主の承諾が要る(民法第612条)。民法の地上権の規定(第265条〜第269条の2)には、譲り渡すときに地主の承諾を求める定めがない |
| 建物の登記の名義 | 建物の登記事項証明書 | 借地権は、借地の上に自分名義で登記した建物があれば、登記がなくても第三者に主張できる(借地借家法第10条)。名義が亡くなった親のままなら、先に相続の登記が要る |
| 契約の中身 | 借地契約書、地代の領収書 | 残りの期間、地代、建て替え・増改築の制限、譲渡についての取り決め。契約が始まった時期で、旧借地法と借地借家法のどちらの決まりが使われるかが変わる |
借地借家法では、借地権は「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と決められています(第2条第1号)。地主の承諾が要るという決まり(民法第612条)は賃貸借の条文なので、この記事で説明する承諾・承諾料・裁判所の許可は、土地の賃借権の借地権の話です。地上権かどうか分からないときは、契約書の表題と条文を不動産会社か弁護士に見てもらいます。
条文は e-Gov 法令検索で読めます(民法・借地借家法。参照日:2026年10月7日)。
借地権の売り方は4つ|相手ごとの違い
借地権の売り方は、買う人がだれかで4つに分かれます。地主が買うなら承諾の問題はなく、地主以外が買うなら承諾(または裁判所の許可)が要ります。
| 売り方 | 買う人 | 地主の承諾 | 承諾料 | 合うケース |
|---|---|---|---|---|
| ①地主に売る | 地主 | 地主が買い手なので、承諾の問題は生じない | かからない | 地主が土地を取り戻したいと考えている |
| ②承諾を得て第三者に売る | 個人・会社(不動産会社が仲介) | 要る。得られなければ裁判所の許可を申し立てる | 話し合いで決める。裁判所の許可では金銭の支払いを条件にされることがある | 地主との関係がよく、買い手を探す時間がある |
| ③地主と一緒に土地ごと売る | 個人・会社 | 地主も売り手になるので、地主が売ることに同意していることが前提 | —(代金の分け方を地主と決める) | 地主も底地を手放したいと考えている |
| ④借地権を扱う買取業者に売る | 不動産会社 | 要る(地主の承諾を得る段取りを業者と進める) | 話し合いで決める | 早く現金にしたい、地主と直接話しにくい |

①地主に買い取ってもらう
地主が借地権を買い取れば、地主は土地を自由に使えるようになります。買い手が地主なので、第三者に売るときのような承諾の手続きはありません。地主にとっても土地の利用の制限がなくなる話なので、最初に打診する相手として自然です。値段は話し合いで決めます。
②承諾を得て第三者に売る
不動産会社に仲介を頼んで、買い手を探す方法です。買い手が決まったら、地主に譲渡の承諾をもらいます。承諾がないまま売ると、地主は借地契約を解除できます(民法第612条第2項)。また、承諾がないまま建物を買った人は、地主に建物を時価で買い取るよう請求できるだけで(借地借家法第14条)、借地として使い続けられる保証はありません。あとで食い違いが起きないよう、承諾は承諾料の額とあわせて書面でもらうのが基本です。
③地主と一緒に土地ごと売る
借地権と、地主が持つ底地(借地権が付いた土地の所有権)をまとめて、1つの土地として売る方法です。買い手から見ると借地ではなく普通の土地になるので、買い手の範囲が広がります。売れた代金を借地人と地主でどう分けるかは、話し合いで決めます。国税庁の借地権割合は相続税・贈与税の評価に使う数字で、代金の分け方を決めるものではありません。
④借地権を扱う買取業者に売る
不動産会社が借地権を直接買い取る方法です。仲介と違って買い手を探す期間が要らず、会社が直接買い取るなら仲介手数料もかかりません。地主の承諾は必要なので、地主との話をどう進めるかを最初に確かめておきます。仲介と買取の違いは、空き家買取の相場と流れ|仲介との違い・買取業者の選び方でも詳しく整理しています。
地主の承諾と承諾料(名義書換料)のルール
土地の賃借権を売るには地主の承諾が要り、承諾をもらうときに承諾料(名義書換料、譲渡承諾料とも呼ばれます)を払うことがあります。承諾料の額や、払うかどうかを決めた法律はありません。地主との話し合いで決まります。
| 論点 | 法律の決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 承諾が要るか | 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡せない | 民法第612条第1項 |
| 承諾なしに売ったら | 賃貸人は契約を解除できる | 民法第612条第2項 |
| 承諾料の額 | 定めはない。当事者の話し合いで決める | — |
| 裁判所が許可するとき | 当事者の利益の衡平のために必要なら、許可を「財産上の給付」(金銭の支払い)にかからせることができる | 借地借家法第19条第1項 |
| 売る側が払った承諾料 | 譲渡所得の計算で「譲渡費用」として差し引ける | 国税庁 タックスアンサー No.3255 |
買い手が建物を建て替えたい場合、契約に増改築を制限する取り決めがあると、建て替えにも地主の承諾が要ります。話し合いがまとまらなければ、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法第17条第2項)。売る段階で建て替えの承諾も一緒に話しておくと、買い手が判断しやすくなります。
地主が承諾しないとき|裁判所の「承諾に代わる許可」
地主が承諾しないときは、建物を売る前に、土地の所在地の地方裁判所へ「承諾に代わる許可」を申し立てられます(借地借家法第19条第1項・第41条)。買い手が借地権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに地主が承諾しない、という場合の手続きで、借地非訟と呼ばれます。
- 売る前に申し立てる…条文は「建物を第三者に譲渡しようとする場合」で、売る前に使う手続きです
- 申立先…借地の所在地を管轄する地方裁判所。当事者が合意すれば簡易裁判所でもよい(第41条)
- 裁判所が考えること…借地権の残りの期間、これまでの経緯、売る必要がある事情など一切の事情(第19条第2項)
- 鑑定委員会の意見…裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、鑑定委員会の意見を聴く(第19条第6項)
- 許可の条件…借地条件の変更や、金銭の支払い(財産上の給付)を条件に許可することがある(第19条第1項)
- 地主が「自分が買う」と言った場合…裁判所が定める期間内に地主が自ら建物と借地権を譲り受けると申し立てると、裁判所は相当の対価を定めて地主への譲渡を命じることができる(第19条第3項)
最後の手続きは「介入権」と呼ばれ、申し立てた結果、売り先が第三者から地主に変わることがあります。この許可の手続きは、借地借家法の施行前(旧借地法の時代)に始まった借地にも使えます(借地借家法附則第4条。附則の例外に第19条は入っていない)。なお、第19条が対象にしているのは土地の賃借権で、地上権は対象ではありません。
東京地方裁判所(民事第22部)の借地非訟事件の案内によると、申立ての代理人は弁護士に限られ(借地借家法第44条第1項)、鑑定委員会(弁護士・不動産鑑定士・有識者など3人以上)の費用は国が負担するので、当事者の費用はかかりません。申立手数料は借地の固定資産評価額をもとに計算します。多くの事件は、特段の事情がなければ概ね1年以内に終わるとしています。申立書には買い受ける予定の人の資力を示す資料(個人なら源泉徴収票や確定申告書など)を付けるので、買い手が決まってから申し立てる手続きです。承諾料にあたる金銭の額の目安は、裁判所の案内には載っていません(参照日:2026年10月7日)。
借地権の値段の考え方|評価額は売値ではない
借地権の売値に公的な相場はありません。相続税・贈与税の評価額は計算できますが、それは税金のための数字で、売れる値段とは別です。売値は、売り方(だれが買うか)と、地主の承諾が得られるか、残りの期間、建物の状態などを見て、買い手との話し合いで決まります。
| 数字 | 出し方 | 使いみち |
|---|---|---|
| 相続税評価額 | 自用地としての評価額 × 借地権割合(財産評価基本通達27、No.4611)。借地権の取引慣行がない地域では評価しない | 相続税・贈与税の計算 |
| 路線価 | 国税庁が毎年公表。地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定めている(令和8年分の路線価等について) | 評価額の計算のもと |
| 売値 | 決まった計算式はない。査定と買い手・地主との話し合いで決まる | 実際の売却 |
例えば、路線価が1平方メートル30万円の道路に面した100平方メートルの借地(借地権割合D=60%、補正なし)なら、自用地の評価額は3,000万円、借地権の評価額は3,000万円×60%=1,800万円です。この1,800万円は税金の計算に使う額で、この額で売れるとは限りません。売値を知るには、借地権を扱う不動産会社に査定を頼み、複数の答えを比べます。
借地権の売却を専門の会社に相談するとき
借地権の売却は、地主との話し合いや裁判所の手続きが絡むので、借地権を専門に扱う会社に相談すると段取りを組みやすくなります。相談の前に、借地契約書・地代の領収書・登記事項証明書をそろえておくと、話が早く進みます。
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借地権を売ったときの費用と税金
借地権を売って利益が出ると、譲渡所得として所得税・住民税がかかります。計算は「売った金額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除」で、売る側が払った承諾料(名義書換料)と仲介手数料は譲渡費用として差し引けます。
| 項目 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 仲介で売るとき。上限は代金の400万円を超える部分が3.3%、200万円超〜400万円の部分が4.4%、200万円以下の部分が5.5%(消費税込み)の合計。代金800万円以下の空き家などには特例がある | 国土交通省 報酬告示 |
| 承諾料(名義書換料) | 額は話し合い。売る側が払ったものは譲渡費用 | No.3255 |
| 取得費 | 買った代金など。分からないときは売った金額の5%にできる | No.3258 |
| 税率(長期) | 売った年の1月1日時点で所有期間が5年超。所得税15%・住民税5%。ほかに所得税額の2.1%の復興特別所得税 | No.3208 |
| 税率(短期) | 5年以下。所得税30%・住民税9%。ほかに所得税額の2.1%の復興特別所得税 | No.3211 |
相続した借地権は、亡くなった人が取得した時期と取得費をそのまま引き継ぎます(No.3270)。亡くなった人が取得してから、売った年の1月1日までに5年を超えていれば、相続してすぐに売っても長期の税率です。相続税を払った人が、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ると、払った相続税の一部を取得費に加えられます(No.3267)。
計算例|承諾料100万円を払って2,000万円で売った場合
借地権付きの建物を、仲介で2,000万円で売ったとします。承諾料100万円(仮の額)を売る側が払い、取得費は分からないので5%、所有期間は5年超で、特例は使わない前提です。
| 項目 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 売った金額 | 2,000万円 | — |
| 取得費 | 100万円 | 2,000万円 × 5% |
| 仲介手数料(上限) | 72万6,000円 | 200万円×5.5%+200万円×4.4%+1,600万円×3.3% |
| 承諾料 | 100万円 | 仮の額 |
| 譲渡所得 | 1,727万4,000円 | 2,000万円 −(100万円+72万6,000円+100万円) |
| 所得税・復興特別所得税 | 約264万5,000円 | 1,727万4,000円 × 15% × 1.021 |
| 住民税 | 約86万4,000円 | 1,727万4,000円 × 5% |
| 手元に残る額 | 約1,476万5,000円 | 2,000万円 − 仲介手数料 − 承諾料 − 税金 |
承諾料100万円を譲渡費用に入れないと、税金は約20万円多くなります(100万円×(15%×1.021+5%))。承諾料を払ったら、領収書や合意書を残しておきます。計算例は編集部の試算で、印紙税などは含めていません。端数の処理で数百円ずれることがあります。
自分が住んでいた借地の家を売るときは、家屋とともに売った借地権も「マイホームを売ったときの特例」(最高3,000万円の控除)の対象です(No.3302)。亡くなった親が住んでいた家を相続して売るときは、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の敷地等に土地の上に存する権利(借地権)が含まれ、2027年12月31日までの売却で最高3,000万円(2024年以降の売却で相続人が3人以上なら2,000万円)を差し引けます(No.3306)。空き家の特例には、昭和56年5月31日以前に建てた家であること、売却代金が1億円以下であること、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどの条件があります。どちらの特例も確定申告をしないと使えません。条件の整理は空き家売却の進め方|税金・特例・かかる費用の全体像にまとめています。
借地権を売るまでの流れ
流れは、書類を確かめる → 地主の意向を聞く → 査定 → 買い手を決める → 地主の承諾(または裁判所の許可) → 契約・引き渡し → 確定申告の順です。
- 書類をそろえる…借地契約書、地代の領収書、土地と建物の登記事項証明書。建物の名義が亡くなった人のままなら相続の登記をする
- 地主の意向を聞く…売りたいことを伝え、地主自身が買うか、第三者への売却を承諾するか、土地ごと売る気があるかを聞く
- 査定を頼む…借地権を扱う不動産会社に査定を頼み、仲介と買取の両方の値段を比べる
- 買い手を決める…第三者に売るなら、買い手の名前・使い方(建て替えるか)を地主に伝えられるようにする
- 地主の承諾を書面でもらう…承諾料の額と支払い時期も書面に残す。承諾が得られなければ、売る前に裁判所へ許可を申し立てる
- 売買契約と引き渡し…代金を受け取り、建物の所有権の移転の登記をする
- 確定申告…売った翌年の確定申告で、譲渡所得を申告する。特例を使うときも申告が要る
借地権の売却でよくある質問
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借地権の売却には地主の承諾が必要ですか?
借地権が土地の賃借権なら必要です(民法第612条)。承諾なしに売ると、地主は契約を解除できます。地主が承諾しないときは、売る前に裁判所へ承諾に代わる許可を申し立てられます(借地借家法第19条)。地上権の場合は、民法の地上権の規定に承諾を求める定めはありません。
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借地権付き建物を売却する相場はいくらですか?
公的な相場はありません。相続税の評価額(自用地の評価額×借地権割合)は計算できますが、税金のための数字です。売値は、地主の承諾が得られるか、残りの期間、建物の状態などで変わるので、借地権を扱う不動産会社の査定を複数比べて確かめます。
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承諾料(名義書換料)はいくらで、だれが払いますか?
額も負担する人も、法律では決まっていません。地主との話し合いで決めます。裁判所が承諾に代わる許可を出すときは、金銭の支払い(財産上の給付)を条件にすることがあります。売る側が払った承諾料は、譲渡所得の計算で譲渡費用として差し引けます(国税庁 No.3255)。
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地主が承諾してくれないと、借地権は売れませんか?
売る前に、土地の所在地の地方裁判所へ「承諾に代わる許可」を申し立てられます(借地借家法第19条・第41条)。地主が自分で買うと申し立てた場合は、裁判所が相当の対価を定めて地主への譲渡を命じることがあります(同条第3項)。売り先が地主になるのも一つの解決です。
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旧法(旧借地法)の借地権でも売れますか?
売れます。地主の承諾が要ることも、承諾しないときに裁判所の許可を申し立てられることも同じです。借地借家法の第19条は、施行前に始まった借地にも使えます(借地借家法附則第4条)。
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借地権を売ったら確定申告は必要ですか?
利益(譲渡所得)が出たら必要です。土地・借地権・建物を売った所得は、給与などと分けて計算します(分離課税)。特例を使って税金が0円になる場合も、特例は確定申告をしないと使えません(国税庁 No.3302・No.3306)。
まとめ|まず契約書を確かめ、地主の意向を聞く
借地権は売れますが、土地の賃借権なら地主の承諾が要ります。売り方は地主に売る・承諾を得て第三者に売る・地主と土地ごと売る・買取業者に売るの4つで、承諾料と値段は話し合いで決まります。地主が承諾しないときは、売る前に裁判所の許可を申し立てられます。売る側が払った承諾料と仲介手数料は譲渡費用として差し引けるので、書類を残しておきます。
